ともちゃん の日常42


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2010年1月以前(ともちゃんの日常41へ)

2010年3月

20日(土)
「三寒四温」

27日(土)
「熱が出た!インフル?」

2010年4月

9日(金)
「怖いテレビは嫌い」

24日(土)
「ボーナスでお買物」

2010年5月

1日(土)
「伊右衛門サロン」

4日(火)
「第二京阪道路」

7日(金)
「母の日はパン」

2010年6月

10日(木)
「スポーツ大会で金魚すくい」

2010年7月

13日(火)
「至福の時」

18日(日)
「還来(もろどぎ)神社」

2010年7月25日以降(ともちゃんの日常43へ)


2010年3月20日(土)

無事に2つの成人式に参加した後、この2月、3月は厳しい寒さと季節を飛び越えた春の陽気が交互に訪れていました。ともちゃんも、気候や体調に合せて、訪問してもらったり、通園したりしています。訪問して下さったデイセンターの職員さんやヘルパーさん、歯科衛生士さん、来る人来る人に(ヘルパーさんは来られる方が変わるたびに)、2つの成人式の写真を見てもらい、園でいただいたアルバムのお祝いの言葉も何度も読んでもらっていました。何度見てもらっても、読んでもらっても、ともちゃんは楽しそうでした。

 訪問でも、まいどレーヌのパッケージのシール貼りのお仕事をすることがありました。1シート12枚のシールを職員さんと貼り終えたともちゃんは、職員さんから「もう1シート貼る?」と聞かれて笑顔で「ハハン!」と答え、張切って2シート目に取りかかりました。でも、シールを3枚貼ったところで、ちょっと疲れてきたようです。その様子に気がついた職員さんが「もう止める? 疲れた?」と声をかけて下さいました。ともちゃんは口を開けて、かすかな声で「ホン」、お仕事はおしまい。この後は、抱っこしてもらったまま、おしゃべりになりました。

 「新成人を祝う会」の次に通園した日、ともちゃんは、小・中学部時代を過ごした大阪のMo養護学校の先生方からのメッセージビデオを見せてもらいました。実は新成人を祝う会で、サプライズで上映していただく予定だったのですが、機械のトラブルで当日はできなかったものです。懐かしい先生方のメッセージや歌を聞いて、ともちゃんはうれしそうにニコニコしていました。お母さんは、Mo養護学校時代を思い出して、改めて今の元気なともちゃんがあるのも、これまでにともちゃんに関わって下さった方々のお陰だと、感激していました。

 地域の障害者自立支援協議会主催の医療的ケアの体験実技にお姉ちゃんが参加してきました。これからは、お姉ちゃんも、ともちゃんの医療的ケアの戦力になります。お姉ちゃんがともちゃんを抱っこしている時に、ともちゃんがしゃっくりをしました。ともちゃんのしゃっくりは吸引すると止まるので、お姉ちゃんが初吸引にチャレンジです。カテーテルを鼻腔から入れようとしましたが、スムーズに入らず、何度も突いたのでともちゃんはくしゃみを連発。それでしゃっくりは治まりました。でも、くしゃみで出て来た鼻水は、ちゃんと吸引してもらいました。

 春が待ち遠しいともちゃんは、京都観光のムックを買ってもらいました。ヘルパーさんが来られた時には一緒に見て、お出かけシーズンになるのを楽しみにしています。近くにも行きたいところはたくさんあります。お出かけといえば、デイセンターから訪問に来ていただいた時に、園の旅行の話になりました。昨年と今年の2年がかりで、デイセンターのメンバーさんが何班かに分かれて一泊旅行に出かけています。ともちゃんも、今年は日帰りで参加したいと思っています。お母さんと職員さんが話をしている間、ともちゃんも時々声を出して話に寄っていました。

 さて、今日は3連休初日の暖かい日です。明後日からロンドン旅行に行くお姉ちゃんのために、道中安全祈願とお守りを買う目的で、近くの向日神社に行きました。お賽銭をあげる時はニコニコしていたのに、大きな鈴を鳴らすと、心づもりをしていなかったともちゃんはびっくりして、筋緊張が強くなっていました。朝の境内はまだ人気も少なく、穏やかな日差しの中でリラックスして気持のよい散歩ができました。紅梅は満開に咲き誇り、しだれ桜はちらほら咲き始めていました。春本番は、もうすぐそこに来ています。

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2010年3月27日(土)

 3月21日の午後、ともちゃんはお母さんに抱っこされてお粥を食べながら、翌日から旅行に行くお姉ちゃんとお土産の話で盛上がっていました。1時間ほどスムーズに食べていましたが、ともちゃんがお粥をアムアムごっくんと嚥下する速度が遅くなってきました。「疲れてきたかなあ。ちょっと、休憩しよか。」、手を止めたお母さんは、ともちゃんに付けているパルスオキシメータの心拍数の値が毎分130回台と高いことに気が付きました。午後3時過ぎのことです。

 「どうしたんかなあ? お粥の収まりが悪いのかなあ?」、「今まで機嫌良かったやん。ゲップが出そう?」、「心拍数が高いの、気付かんかったなあ。」。お母さんとお姉ちゃんはしばらく様子を見ていましたが、やっぱり心拍数は高いままでした。「まさか、熱が出たんと違うやろな。」と測ったら、37.9℃でした。熱といえば、新型インフルエンザがすぐに思い浮かびます。今ではもう終息気味ですが、基礎疾患のあるともちゃんにとっては、罹れば怖い病気であることに変りありません。

 お母さんは、卵アレルギーがあるために予防接種が受けられないともちゃんがインフルに感染した場合の対応について、主治医の先生に聞いた言葉を思い出していました。インフルに罹っても、タミフルを早い時期に飲めば大事には至らないと思われるので、できるだけ早く受診する。発病後しばらく時間がたたないと、インフルの感染検査ができないから、事情を説明して感染検査の前に先にタミフルを飲み始めるようにとの話でした。

 お母さんが思案を巡らせている間も心拍数は高いままで、次に体温を計ると38.2℃でした。このまま、熱はまだ上がりそうです。新型インフルの可能性も考えて、早く受診したほうがよさそうです。今日は、大荒れの天気で突風が吹いているので、かかりつけの大学病院までは行かずに、地域の休日診療所に行きました。ともちゃんは、熱以外の症状は特にはなく、診察した先生は明日またインフルの検査に来るようにと言って、タミフルを処方して下さいました。

 薬を待っている間、ともちゃんは一時的にしんどそうでした。ウーッ、ウーッと周期的に低く呻いています。顔色もよくありません。筋緊張が強くて、力を入れて呻いているので、空気の通りが悪そうです。投与していた酸素の流量を毎分2リットルに上げて、上体を寝かし気味に抱っこし直して、声を掛けながらゆっくりと胸をさすっていたら、緊張が緩んで呼吸が楽になりました。家に帰り、いつものように抱っこすると、リラックスして呼吸は全く普通で、パルスオキシメータで動脈血中酸素飽和度を測っても問題のない値で、安心しました。

 帰ってからも、熱は上がりましたが、38.9℃をピークにして、7時半ごろ寝室に行く前には38.5℃に下がりました。このまま、ぐっすりと眠って欲しいと思いましたが、眠いのに筋緊張が強くて、しばらくは寝苦しそうでした。力が入り過ぎていて息が吐きにくそうで、ウーッ、ウーッと呻いたり、空気をたくさん飲みこんで、ゲップが何度も出ることもありました。ともちゃんが、足を突張るのに抗して、膝を屈曲するのは大変ですが、うまく膝を曲げて抱っこの姿勢がとれると、ともちゃんの緊張がゆるんで、ぐっすりと眠りに入りました。

 翌22日の早朝、ともちゃんの様子が気になっていたお姉ちゃんが寝室を覗くと、ともちゃんは大きな目を開けていました。リビングに連れて来て貰うとご機嫌で、「もう元気になったよ。」とばかりに、ニコニコしながら声を出しています。ちょっと声が枯れているような気がしますが、熱も全くの平熱です。早い電車に乗るお姉ちゃんを笑顔で送り出したともちゃんは、いつものように朝食を摂って、休日診療所を受診しました。今日はずっと平熱ですが、昨日の様子を伝えて、インフルエンザの簡易検査を受けました。結果は陰性でした。

 とはいえ、インフルに罹っていても、早期に飲んだタミフルが良く効いて、体内のウィルスが減ったために検査に出ないことも考えられるので、念のためにタミフルはこのまま飲み続けて下さいとの指示を受けました。実際にインフルに罹っていても、簡易検査の結果が陰性と出ることはよくあるのだそうです。結局、ともちゃんの熱の原因は不明のままでした。

 その後、ともちゃんは熱は出ていません。インフルに罹っていた場合を考えて、デイセンターからの職員さんの訪問も、ヘルパーさんの訪問も、この1週間は止めていました。ともちゃんも、発熱のダメージがあったのか昼間もウトウトとよく眠っていて、それで体力を回復したようです。あの熱はなんだったのでしょう。インフルでは筋肉痛があると聞くので、筋緊張が強かったのがそうだったのかも知れません。でもインフルだったとしたら、人混みにも行かず、周りに感染者もいないともちゃんは、いつ、どこで感染したのでしょう。今となっては、あの熱が新型インフルエンザであってくれたほうが、免疫ができたのでありがたいのですが。でも、何の熱であれ、とにかく大事に至らなかったのが何よりです。

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2010年4月9日(金)

 午後3時頃、ともちゃんはお母さんに抱っこされて、少し昼寝をしました。目覚めたともちゃんは、最初は機嫌よく声を出していたのですが、そのうち「オーー、オーー」と大きな声を出し始めました。コミュニケーションを取りたい風でもなく、テンションが高くてはしゃいでいるという風でもありません。「どうしたん?」、機嫌をとるように話しかけても、お腹をさすっても、全く効果がありません。

 お母さんは、しばらくどうしたらいいか戸惑っていましたが、ふと気がつきました。「テレビ怖いなあ。変えてみよか。」。その時、テレビはNHKのBS-Hiで「異界百物語~Jホラーの秘密を探る~」がついていて、小泉八雲に扮した外国人の俳優さんがおどろおどろしく怪談を語っていました。しかも英語で! チャンネルを地上波アナログにして番組が変ると、驚くくらいピタッとともちゃんは黙りました。

 さっきのJホラーの番組は、喋り方や効果音が怖い雰囲気を出していたし、英語なので語調もいつもと違い、ちょっと異様な感じがしていました。言葉も番組の内容も分からないともちゃんは、これを不安に感じて大きな声を出していたのでしょう。テレビで「奇跡の干潟・六条潟~三河湾アサリはぐくむ里海~」という穏やかな番組がついている中では、ともちゃんは落着いて、話しかけにも反応してくれるようになりました。

 思えば、ともちゃんは、テレビの中の面白いシーンに反応して笑っていると思われることがあります。お父さんとテレビで吉本新喜劇を見ている時、ちゃんと笑うところで、お父さんやお客さんが笑っているからではなく、ともちゃんが自分から笑っていることがよくあります。番組が全体的に楽しそうで、テンポのよい言葉のリズムや間がともちゃんにとって面白く感じられるのではないかというのが家族の見方です。

 ともちゃんがテレビの中の楽しそうな雰囲気を感じるのであれば、テレビの中の怖そうな雰囲気に不安を感じて不快になることがあったとしても不思議ではありません。お母さんは、今日のこのともちゃんの様子がおかしくて、夕方お姉ちゃんが帰宅した時も、お父さんが電話をかけてきた時も、一番に伝えました。「今日のテレビ怖かったなあ。」、「ウーン」。これだから、ともちゃんとの生活はおうちにいても退屈しないとお母さんは思っています。

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2010年4月24日(土)

ともちゃんは、通園しているデイセンターで先週、昨年度下半期のボーナスをもらいました。ともちゃん達、デイセンターのメンバーさんは日々様々な活動を通して生活を楽しんでいるのですが、その活動の一環の中で「まいどレーヌ」作りなどの仕事もします。まいどレーヌなどを販売した収益は、半年に一度ボーナスという形でメンバーさんに均等に支給されます。社会人になったともちゃんは、自分で稼いだボーナスでお買物に行くことを楽しみにしています。

 折しも、ともちゃんの好きなショッピングセンターが改装されたことを聞きました。今日は、家族揃ってお買物に行きました。毎年5月の大型連休前、すっかり暖かくなると、ともちゃんのお出かけシーズンが始まります。今年はまだまだ寒い日もありますが、家族は無事に冬ごもりの季節を越せたことを嬉しく思っています。久しぶりのお出かけに、ともちゃんは行きの車の中からニコニコ喜んでいました。でも興奮し過ぎず、ちょっと休憩もして、良い状態でショッピングセンターに到着しました。

 改装された直後だったためか、駐車場は満杯です。エレベータ前の車椅子用駐車スペースのみならず、普通の駐車スペースにも空きがなかなか見つからずに、駐めるまでに立体駐車場の同じ階の中をぐるぐる回りました。車を降りたら、いつも通りフードコートでミルクの注入を先に済ませます。ここも混雑していますが、今なら、まだ席を選んで座れます。今まで愛用していた角っこの席は、改装で通路との仕切がなくなっていました。それでは落着かないので、通路に沿った壁際の席にしました。注入は、人が通らず、車椅子を置いていても邪魔にならない席がベストです。

 ともちゃんは、今回も貰ったボーナスをキティちゃんの財布に入れて持ってきました。けれど、今までのように財布を首から下げてはいません。大人になったともちゃんは、お姉ちゃんに小さなバッグを借りて、そこに財布を入れて持たせて貰いました。通路を行くともちゃんは、ちょっと自慢げでうれしそうです。今日のお買物で何を買うかは既にお姉ちゃんと相談しています。これから夏に向けて、着回しのきく白い半袖のブラウス、そのお気に入りの一枚を探します。

 まずは、フードコートのフロアにあるともちゃんがいつも利用する店に行ました。店内の通路が広くて車椅子でも回りやすく、ともちゃんはたくさんの服が並んでいるのを興味深そうにキョロキョロ見て楽しそうです。でも、残念ながら、この店には思っていたようなブラウスはありませんでした。「2階に行ってみよか。」とお姉ちゃんが提案してくれました。でも、その前に、お姉ちゃんが今髪を括るゴムを買ってくれると言います。急いで出てきたので前髪をゴムで括るのを忘れていて、前髪がうっとうしかったのです。

 髪飾りゴムを売るアクセサリー雑貨の店の前に来ると、キラキラと華やかな店内が目に映ったのか、ともちゃんはキャハハハと声を出して笑い出しました。これがいいかあれがいいかとともちゃんに尋ねながら、たくさんの中から涼しげな髪飾りゴムに決めました。ついでに靴下屋さんにも寄りました。今度はお父さんも入って、ともちゃんの靴下を選びます。選り取り3足セットなので、選び甲斐があります。候補を選ぶと、最後はちゃんとともちゃんにお伺いを立てて決定して貰いました。

 2階では、ブラウスを探していくつかの店を覗き、新しくショッピングセンターに入った店に入りました。「ほら、こんなんあるわ。」、お姉ちゃんが思っていたようなブラウスを探してきました。その声を聞きつけて、店員さんも寄って来ました。「どういうのをお探しですか?」。それまでキョロキョロしていたともちゃんは、強ばった顔をしています。お姉ちゃんが「これ、どう?」と尋ねても、全く反応がありません。それを見たおねえちゃんは「そうしたら、これは一応候補にしとこか。」と言うと、店員さんの案内に応じて行ってしまいました。

 残されたお母さんが、ともちゃんに「さっきのブラウスどう?」と聞くと、表情のなかった顔がニヤっと笑いました。「店員さんが来たから、緊張したん?」と耳元でささやくと、ニャハハと笑顔が返ってきました。「あのブラウスに決める?」、「ハハハ!」。これで決りです。そのことをお姉ちゃんに伝えて、ともちゃんはブラウスを買いました。ともちゃんのボーナスで足らない分は(大分足りなかったけど)、お父さんに出して貰いました。ブラウスを入れた紙袋を持たせて貰って、ともちゃんは意気揚々と店を出ました。

 ブラウスを買った店でのともちゃんとお母さんの「会話」ですが、ともちゃんはお母さんの話す言葉を理解しているわけではありません。けれど、知らない店員さんが寄ってきたので、内弁慶のともちゃんは落着いてお買物ができなかったのは本当でしょう。店員さんが行ってしまってホッとしたところでお母さんに声を掛けて貰って、うれしかったのでしょう。ともちゃんがどこまで状況を理解しているかは別にして、ともちゃんはお買物が大好きです。この後も、サンリオショップや色々な店を見て回り、十分楽しみました。

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2010年5月1日(土)

5月の連休に入って、まずはゆっくり休養を取ったので、ともちゃんは元気一杯です。今日は朝食をお父さんに食べさせて貰いました。いつになく、速いペースで食べ終ったともちゃんに、お父さんが「すごいなー。親父が(いつもの部屋着ではなくて外出着に)着替えてるってことは、今日はお出かけがあるってことやもんな。よう分かってて、早う食べたんやなー。偉いわ。」と声をかけました。「ニャハハハハ!」ともちゃんは、ちゃんと分かっているよと、うれしそうです。

 ともちゃんが、待ちに待っていた家族揃ってのお出かけ先はカフェです。連休は高速道路も混んでいるし、遠くへ行くことだけが楽しいお出かけではありません。若者のともちゃんは、京都の三条烏丸の伊右衛門サロンで、お洒落にお茶ならぬミルクの注入をしようと出かけました。ここは、以前、お姉ちゃんが友達と行って、店内が広くてバリアフリーで車椅子でも行きやすいので今度一緒に行こうと、ともちゃんに教えてくれたところです。また、ともちゃんがヘルパーさんと見ていた京都観光のムックにも、紹介されていました。

 御池の地下駐車場に車を止めて、エレベータで地上に出ました。御池通りの歩道を西に向って歩き出すと、ともちゃんは「ここは知らないところや。」とキョロキョロしています。確かに、歩道に面した建物は大きなビルだし、すぐ横の車道を途切れることなく車が走っていて、ともちゃんがあまり経験したことのない喧噪に溢れています。でも、御池通りの歩道は街中なのに広くて平らで、車椅子のともちゃんを中心に家族で一団になって進んでも、邪魔にならないだけでなく、自転車が楽々と追越して行くゆとりがあります。

 実は、ともちゃんは、以前に一度、京都文化博物館のナスカ展に行く時にも御池通りを通ったことがあって、その時も通行しやすさに感激したものでした。今回はさらに季節も良くて、爽やかな晴天に街路樹の若葉が輝いています。最初は少し不安げだったともちゃんも心地よくなって、笑顔で散歩を楽しんでいました。ビルの合間の老舗高級旅館の黒塀や、小さな神社の前も通って、烏丸通りまで行きました。今度は烏丸通りの西側の歩道(これは御池通り程広くはありませんが)を三条通りまで下がります。

 「ここやで!」お姉ちゃんに教えられて、三条通りを西に曲がると伊右衛門サロンはありました。入口には段差はなく、車椅子でもするりと中に入れました。まだ朝のうちですが、ここは朝食メニューもあるので、観光客で賑っていました。奥の中庭が見える席は一杯なのでと言われ、入口側に面した部屋の端っこの席に案内されました。吹抜けの天井が高くて、ゆったりと落着く席でした。中庭が見えないことは全く問題ありません。車椅子を置くスペース確保のためにテーブルを移動するのも、気持ちよく手伝って貰えました。

 ここでは、水の代わりに、まず水出しの抹茶入り煎茶が出されます。ともちゃんの分だけ、ストローを添えて貰っていました。渋くなくておいしい煎茶です。ともちゃんも飲んでみました。ストローでは無理なので、注射器で吸い上げて、口の中にポタポタと落とすと、アムアムアムと味わっていました。家族はそれぞれに朝食メニューとデザートを食べ、その間、ともちゃんはソファ席でお父さんに抱っこされて、ゆっくりと経管でミルクを飲みました。ともちゃんは、注入の間、店内を見回したり、ケラケラ笑ったりして、雰囲気を楽しんでいました。

 ともちゃんにも家族にも、それぞれに満足な朝昼ご飯でした。おいしかった抹茶入り煎茶をお土産に買って、来た道を戻りました。ちょうど御池通りまで戻ってきた時、御池通りの車道を西から東に向かって行く、メーデーの行進と出会いました。メーデーの行進を見るのは初めてのともちゃんは、「なんやろう。」と不安そうな表情に変わりました。ともちゃんも車道一車線隔てた歩道を西から東に向かっているのですが、どうやら、シュプレヒコールに圧倒されて、それがずっと自分についてくることに驚いたようでした。

 でも、少し行くと、別に怖いもんじゃないと分かったようで、シュプレヒコールが聞こえていても、それまで通りのにこやかな表情に戻りました。新しい場所に行くと、思いがけない経験もあります。御池通りの地下駐車場に戻る前に、地下街のゼスト御池にも少し立寄りました。お姉ちゃんがクッションを買うのに付合ったり、Tシャツを見たり、楽しそうでした。京都の近場にも、まだまだともちゃんの知らない楽しいお出かけ先がありそうです。それを探すのも、また楽しみです。

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2010年5月4日(火)

今日は連休2回目のお出かけです。3月に全面開通した第二京阪道路を京都市内の巨椋池ランプから終点の門真ランプまでドライブしました。予想通り、連休の最中でもこの道は混雑していません。夏日になりそうな青空の下、気持ちよく走れます。ともちゃんは頑張って朝食を食べて早く出発できたのですが、今日はそれだけでちょっと疲れています。車の中で少し寝たらちょうどいいと思っていましたが、ともちゃんは周りが色々と気になって、少し寝てはすぐ起きるを繰返していました。

 新しく開通した区間の両側に広がる田園風景を見て、「ともちゃんが小さい頃に交野方面へのお出かけで時々通った辺りと違う?」とお母さんは懐かしそうです。家に帰ったら、地図を見てみましょう。終点で降りると、そこは鶴見緑地の正面にある大通りに繋がっていて、アウトレットパークの塔も見えています。ともちゃんには馴染みの風景です。第二京阪を降りたら近くのファミリーレストランでミルクの注入をするつもりでしたが、午前10時に着いてしまったので、まだファミレスは開いていません。

 この時間から開いているといえば、ショッピングセンターのフードコート。ともちゃんが引越してからできた大日駅のショッピングセンターに行ってみましょう。懐かしい養護学校の近くに寄道をしてから行きます。道の地名表示の聞き慣れた名前をお母さんが読上げると、ぼんやりしていたともちゃんは「ハハハ」と笑顔で覚醒してきました。一方通行が多い養護学校の近くの道をぐるぐる回りながら学校に近付くと、懐かしい校舎が現れました。「畑の脇の木、あんなうっそうとしてなかったやんなあ。」。「オーン」とともちゃんは答えます。

 大型ショッピングセンターに入ると、音楽が賑やかに響く店内に、ともちゃんはいつも行くショッピングセンターとは違うぞと警戒していました。フードコートはまだ空いていて、車椅子が邪魔にならない場所を選んで注入を始めました。最初はちょっと元気がなかったともちゃんも、注入が終るころには楽しくなって、笑顔で初めて見るフードコートの様子を眺めていました。でも、今日はここでゆっくりとお買物はしません。注入が終ったら、1階のスーパーで食料品だけを買って帰ります。

 張切っているともちゃんは、スーパー内の混雑する通路でもニコニコしながら左足をピンピン伸ばしてキョロキョロ、勇んで買物を楽しんでいます。家族からは「危ない。」と足を押さえられていました。でも、元気そうなのはカラ元気でした。本当はまだ朝からの疲れを引きずっていて、お母さんがレジに並んでいる間に、硬直発作を起こしてしまい、丸く抱っこしてもらって治まりました。午後から大阪で友達と会うお姉ちゃんを京阪電車の駅で降ろし、また養護学校に寄道をして、帰路につきました。

 往路とは違う方向から養護学校に近付いたのですが、町工場やゴルフ練習場があったあたり一面に、新しい建売り住宅がぎっしりと建てられていました。ともちゃんが転校して5年、こちら側の町並みはすっかり変っていました。呼吸する度に、ともちゃんの左背中にゼロゼロと痰が引っかかるのが感じられるので、車を止めて吸引してから第二京阪に入りました。楽しかった里帰りドライブもおしまいです。お家に帰ったら、ゆっくり寝て疲れを取って、連休明けからの生活に備えましょう。

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2010年5月7日(金)

ともちゃんの社会人3年目は順調に始っています。週一回の通園は休むことなく、まいどレーヌ作りをはじめ、様々な活動を楽しんでいます。

 4月15日はH園の新メンバーの歓迎会でした。今年度は、ともちゃんが日頃の活動で参加するグループに、養護学校を卒業した新しいメンバーさんが来ました。『先輩』となったともちゃんは、「ギャハギャハ」と楽しそうに参加して『たんぽぽ』の歌をみんなで歌った時も声を出していたそうです。ともちゃんは、H園の中にちゃんと居場所を見つけて、通園生活を謳歌していると家族は感じていますが、それは年々強く確かなものになっています。大変うれしいことです。

 園でのともちゃんの今年度の大きな目標は、日帰り旅行です。H園のデイセンターでは、昨年度と今年度の2年間にデイセンターのメンバーさんがいくつかのグループに分かれて一泊旅行を楽しむ計画が立てられています。夜間の呼吸管理が必要なともちゃんは、日帰りでの旅行を希望しています。職員さんとお母さんは、今まで折にふれてともちゃんの旅行について相談してきました。そして、ともちゃんに無理のない日帰り旅行を個別に計画して頂くことになりました。

 恒常的に週1回の通園が果たせているとはいえ、ともちゃんはまだ園からの外出を経験していません。日帰り旅行までには、園から近くへの外出を何度か経験しておきたい・・・というわけで、4月28日は園からの初めてのお出かけをしました。近くのスーパーに、グループの活動で行うパン作りの材料を買いに行きました。職員さんに抱っこされて、園のバンに乗り込んだともちゃんは、大先輩の女性、新メンバーの女の子と職員さん達、吸引器を持った看護師さんと一緒にニャハニャハと機嫌よく出かけていきました。

 スーパーでも、ソーセージやチーズを買うのに「どれにするー?」、「そっちと違うで。」、「これ、どうや。」とてんやわんやしている職員さん達の様子に、ギャハハハと大笑いして、楽しく買物をしました。吸引器を使うこともなく、車椅子の固定された姿勢で筋緊張が強くなる頃には、ちょうど車に戻って抱っこしてもらい、元気に帰ってきました。園から近くへの外出第一弾は、まずは難なくクリアできました。

 さて、今日は買出しした食材で、パン作りの活動をしました。ともちゃんは楽しげにチーズを切ったり、パン生地を伸ばしたりしました。そして、焼き上がったパンは、その場で母の日のプレゼントとしてお母さんに渡しました。焼きたてふんわりで、よい匂いがします。お母さんは全部独り占めしたいところですが、まだほのかに暖かいパンの半分を食べました。次に帰宅したお姉ちゃんがその半分、最後に帰ったお父さんが残りを食べました。刻んだソーセージとチーズを包んだパンは、食べると風味が広がります。それに、優しい甘さのあんパンもありました。家族みんなから「おいしい!」と言われて、ともちゃんは得意満面です。

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2010年6月10日(木)

今週、ともちゃんは今年度初めて、週に2回の通園を果たしました。

 7日(月)の活動はデイセンター全体の音楽でした。この日の園の連絡ノートには、すでに活動が始っていたホールに行くなり、キャハハハと大笑いでしばらく笑いが止らなかったともちゃんの様子とともに、こんなことも書かれていました。「すいかの名産地」や「キラキラ星」の歌はともちゃんも知っているようでニコニコ楽しそうにしていたのに、「アブラハムには7人の子」は知らない歌なのか、他のメンバーさんの盛上りについて行けないのか、ちょっと冷めた目で見ていたというのです。

 帰ってこれを読んだお母さんは、びっくりしました。ともちゃんが知っている歌と知らない歌がその通りだったからです。もちろん、職員さんはそんなことをご存じのはずはありません。「すいかの名産地」や「キラキラ星」はともちゃんが保育所でよく聞いた歌です。「すいかの名産地」はお姉ちゃんが家でもよく歌っていました。けれど「アブラハムには7人の子」は、お父さんは知っていましたが、お母さんもお姉ちゃんも知らなくて、家でも歌ったことのない歌でした。偶然だったのかも知れませんが、ちょっとうれしい驚きでした。

 2日間家で休息して、今日はスポーツ大会です。ともちゃんは通常の通園も好きですが、行事がある時はまた一段と楽しみにしているようです。早くから何度も、「もうすぐ行事やなー、楽しみやなー。」と楽しげに話しかけられるので、ともちゃんも自然と期待して気分が盛上るのでしょう。「明日のスポーツ大会、元気にして行こな!」、「アハハン!」。張切っても、体調が優れないと十分に楽しめませんが、幸い今朝もともちゃんの体調は絶好調。早くに朝食を終えて、お迎えの車を待構えていました。

 かんかん照りの快晴の下、園の駐車場(スポーツ大会の会場)に建てられたテントの中は一杯です。ともちゃんは職員さんに抱っこされて、駐車場に面したホールの入口から「借り物競走」を観戦しました。品物の名称や職員さんの名前を呼ぶ声が飛交う参加者の慌てぶりにスポーツ大会ならではの賑わいを感じて、ともちゃんも楽しそうです。職員さんのアトラクション「チョコ食いレース」は大爆笑。仮装をして、生クリームの中のチョコレートを手を使わずに食べた職員さんの姿に拍手が起こると、ともちゃんも大喜びで「ギャハハハハ」。

 「金魚すくい」にともちゃんは参加します。ワークセンターと、ともちゃんの属するデイセンターの対抗です。メンバーさんはスプーンをバトン代りに順番に金魚の桶のところに行き、作り物の金魚をスプーンですくい、それぞれのチームのボールの中へ入れます。最後にボールの重さを量り、重い方のチームが勝ちという競技です。桶の底には重い金魚が沈んでいますが、すくうのは難しいのです。ともちゃんも、張切って力が入ると伸ばしにくい腕をうまく持って貰って、満面の笑顔で金魚をすくっていました。

 ともちゃんが出場した「金魚すくい」の1回戦は、残念ながらワークセンターの勝利でしたが、そんなことはお構いなしでともちゃんは存分にスポーツ大会を楽しんでいました。

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2010年7月13日(火)

 H園に通園して全力で活動を楽しんだともちゃんは、お昼のミルクの注入後、いつも通り帰宅しました。家に帰ってゴロンと布団の上に置かれると、これまたいつも通り、そのまま眠ってしまいました。大学の課題を家でまとめていたお姉ちゃんが2階から下りて来ました。H園のワークセンターのパン屋さんで買ってきたパンを食べながらお母さんと談笑していると、しばらく眠ったともちゃんがフッと目を開けて、キャハハハと楽しそうに笑っています。

 「あんた、いつも、園に行ってきた後はほんまに楽しそうやなあ。」。「ともちゃん、今日はスイカ割りしたんやって。」、「よかったなー。」。「ご機嫌で、楽しかったらしいわ。スイカを叩く音にはビクッとするけど、その後ギャハハって笑ってたんやって。職員さんがふざけてスイカの代りに叩かれに行かはったら、そのドタバタぶりにともちゃんは大笑いしててんて。」。2人でともちゃんの様子を見守っていると、ともちゃんはまた目が細くなって、そのまま眠りに落ちていきました。

 「ともちゃんって言葉は分らへんのに、周りの楽しい雰囲気はちゃんと感じて、自分も楽しんだはるやん。どういう感じなんやろなあ?」、お母さんがともちゃんの次の予定、昼食のお粥ペーストの準備をしながら喋っています。「それって、私らが外国人の中にいるようなもんと違うかなあ。言葉が全く分らへんでも、その人らが怒ってるのか、喜んでるのか、何となく口調で分るやん。」。その間、眠っているともちゃんは何度か微笑みを浮かべて、まどろんでいました。

 お母さんの準備が終った頃、ともちゃんは、アハハハと薄目を開けました。「おっ、ともちゃん起きてきたん。お粥にしよか?」。でも、まだまだぼんやりしているともちゃんを見て、お姉ちゃんが「ともちゃん、まだ眠たいって。今日は楽しかったなーと満足感に浸りながら、ウトウトしたはる至福の時や。もうちょっと寝かしといたげよ。」。助け船が出たともちゃんはスーッと目を閉じて、もうしばらく至福の時を味わいました。

 1時間ぐらい眠って、はっきりと覚醒したともちゃんは、今日は特別にお粥の前に園で貰ってきた「スイカ割りのスイカ」をつぶして貰って、その汁をスポイドでおいしそうに飲んでいました。

 絶好調で通園しているともちゃんは園での活動にどんどん参加して、経験を積みながら楽しみを広げています。父の日にもパン作りをしました。デイセンター全体の音楽にも何度も参加しました。自分の鳴らす音にびっくりもしたけど、トーンチャイムの演奏にも参加しました。「蛙の歌」が好きなようでした。それから、今年度と来年度の(2年ごとに新たに決める)園のクラブ活動は、音楽クラブに決めました。

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2010年7月18日(日)

京都市右京区の西院にある春日神社の境内に還来神社があります。還来(もどろぎ)とは旅に出た人が無事に帰還することを言い、古来より還来神社は旅行道中安全祈願の神様として信仰されてきました。西院の地に居を構えた淳和天皇の皇后、正子内親王が大火から奇跡的に脱出し、再び西院の地に無事戻ってこられたという伝説に彩られ、旅行安全、交通安全の神社として現在も親しまれているということです。

 ともちゃんのお姉ちゃんは海外旅行が好きで、お金と時間を作っては、せっせと出かけています。ともちゃんはお土産と土産話を楽しみにしているのはもちろんのこと、こまめに送られてくるメールや写真をお母さんに読んで貰ったり、グーグルマップのストリートビューで街角を眺めたり、ウェブ定点カメラでリアルタイムに現地の天気を見たりと、一緒に旅行気分に浸っています。そんな中、何よりも一番望むことは、お姉ちゃんが無事に元気で帰ってきてくれることです。

 というわけで、8月に旅行に出かけるお姉ちゃんのために、今日は還来神社へお守りを授りに行きました。朝、お父さんが神社の駐車場への道順を地図で調べていました。それを見ていたお母さんが「ここ、ともちゃんが好きなショッピングモールの近くやん。車で行く途中、ともちゃん、ショッピングモールに行くんかと思うかもしれんな。」。お父さんは、「近くやけど、道順は全然違うで。この細い道は左折でしか入られへんやろ。大体、ともちゃん、行く道の車窓風景だけでどこへ行くか分らへんやんな。」。その時、すかさず、ともちゃんが「ウーン。」。お父さんは、ともちゃんに怒られてしまいました。

 集中豪雨が相次いだ今年の梅雨が明けて2日目、今度は真夏の太陽が照りつけています。家を出て車に乗込むだけでも、ジリジリと肌が焼かれます。そのせいでしょうか、国道9号線に入ると、京都市内から日本海へ向かう対向車線はびっしりと渋滞していました。神社の駐車場に到着したら、ともちゃんの夏の必需品、日傘をさして、車椅子の扇風機を回します。玉砂利の境内、車椅子を押すお父さんは大変ですが、春日神社本殿も還来神社も社務所もコンパクトにまとまっていて幸いでした。ともちゃんは楽しげにお参りをして、お姉ちゃんにお守りを授りました。

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